2025年の働き方を振り返る:複数案件を並行稼働した実践記


はじめに:複数案件を並行稼働した理由

フリーランスのソフトウェアエンジニアとして週5日のフルタイム稼働を続けていると、この働き方を続けて良いのかと考える瞬間があります。売上が頭打ちになる不安、1社に依存するリスク、そして慣れた環境で感じる技術的な伸びの鈍化。これらに悩まされる方もいるのではないでしょうか。

私にとっての2025年は、まさにこうした課題に向き合った1年でした。

きっかけは、数年にわたって参画していた継続案件において、自分の中に少しずつ余裕が生まれ始めたことでした。ドメイン知識や技術スタックに習熟し、役割が実装中心から設計・レビュー寄りに変わったことで、フル稼働でなくても価値を出せる状態になっていました。

安定した長期案件は継続しつつ、リソースの余白で新しい現場も経験し、収益の柱を増やす。

こうした目的を実現するために選択したのが、案件の並行稼働でした。既存案件の稼働を0.6人月に調整し、新規案件に0.8人月で参画する。単に仕事量を増やすのではなく、役割の変化に合わせてリソースを再配分する試みです。

並行稼働を成立させる前提条件

複数案件の並行稼働は、リモートでの参画であることが前提となります。物理的な移動がないからこそ、限られた時間の中で柔軟なスケジュール調整が可能になります。そのうえで、最も懸念されるのがスケジュールの重複です。特に定例会議など、リアルタイムの参加必須な時間が重なると対応できません。

これを防ぐために、私は以下の2点を徹底しています。

  • 会議時間の事前確認:新規案件への参画の際には、あらかじめ以下の項目を確認します。会議時間が重複しないよう、契約前の段階でクライアントと明確に合意しておくことが、円滑な並行稼働を維持するための大前提となります。
    • 定例会議の曜日と時刻
    • コアタイムの有無と時間帯
    • 緊急対応の期待値
  • 時間調整の柔軟性確保:定例会議など参加必須の時間帯は固定しつつ、それ以外の作業時間は柔軟に調整できる余地を意識的に確保します。既存案件では、日頃からクライアントに納得してもらえる成果を出し、継続的な信頼を得る。その結果として、自身がスケジュールをコントロールできる主導権を保持することが重要になります。

リソース管理の実践

動的なスケジューリング

私は、月火はA社、水木金はB社といった曜日固定の運用はしていません。固定スケジュールは、片方の案件で急ぎの対応が必要となった際に、共倒れとなるリスクがあるからです。

代わりに、常に案件の進捗と締切を把握したうえで、その日のタスクに合わせて、例えば以下のように比率を変えています。

  • A社のリリース直前週:A社70%、B社30%
  • B社で障害調査発生:B社優先

土日の補助的活用

また、並行稼働を継続するための工夫として、土日の活用が挙げられます。

  • インプットによる効率化:平日の作業中に生じた技術的な疑問や調査事項を、土日に深く掘り下げます。このインプットが、翌週の作業スピードを支えます。
  • 非同期作業の貯金:思考負荷の高い設計や重い実装を土日に前倒しで実施し、月曜の朝にレビューを依頼します。そうすることで、平日はレビュー対応やチャットの返信といった比較的負荷の低いタスクを中心に進め、日中の同期的な稼働負荷を下げることができます。

もちろん常に土日を使うわけではありません。繁忙期に限って前倒しし、翌週の作業時間を短縮するための先行投資として位置づけています。

品質を維持するための私の限界ライン

実際に並行稼働を実施して痛感したのは、私にとっては、1.4人月が睡眠時間を削らずに品質を維持できる稼働の上限だったことです。

睡眠不足は判断力を鈍らせ、結果として手戻りに多大な時間を要します。夜間や土日の稼働は、終わらないから無理に働くのではなく、あくまで明日の自分を楽にするためという姿勢で行うことが、持続可能な運用のコツです。

売上増の先に待っていた税負担

売上が伸びること自体は喜ばしい一方で、私に突きつけられたのは大幅な税負担の増加という事実でした。

いくら売上が増加しても、税務の知識がなければ手元に残るお金は期待したほどには増えません。想定を上回る納税額という結果が、税務知識の重要性を私に強く認識させてくれました。稼ぐための案件運用と、守るためのマネーリテラシー。この両輪を回すことで初めて、個人事業主としての活動を持続可能なものにできるのだと感じました。

まとめ:働き方の最適化で見えた課題

2025年は、複数案件の並行稼働によって、売上増加・リスク分散・技術的な経験の幅を広げることを同時に実現できた1年でした。一方で、実践したからこそ見えてきた限界もあります。それは、どれほどリソースを最適化しても、売上が自身の稼働時間に依存している事実に変わりはないということです。

どれだけ時間単価を引き上げたとしても、売上が稼働時間に連動している働き方である限り、伸ばせる数字にはどこかで限界が訪れます。実際に1.4人月まで稼働を増やしたことで、その限界を感覚ではなく、現実的な制約として認識しました。

並行稼働は有効な戦略でした。しかし、それはあくまで労働集約モデルの中での最適化に過ぎません。2026年は、この構造そのものを少しずつ変えていくことを目標にしています。次は、労働時間に縛られない働き方をどう設計するか。その検討過程についても、今後整理していく予定です。